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2007年1月(日)西新宿にて。

ゲスト:清水和磨選手(総本部)
聞き手:松原隆一郎(総本部)
テープ起こし:一号・西村(もうすぐ志田)知子(吉祥寺)



大道塾の過去と現在をつなぐ

ーー:今日は2006年の北斗旗無差別で準優勝された清水和磨選手にお話を伺いたいと思います。
 清水選手は長野県出身で現在33歳、総本部所属です。身長は179cm,体重は86kgですか。空道歴は11年、ただいま二段ですね。戦績は04年の北斗旗超重量級で優勝。無差別は02 03 06準優勝、05年の第二回世界大会では重量級3位になっておられます。

近年、空道は急速に国際化が進んでいますね。ロシアは塾生が何万人もいるらしいし、選手でも相当の数がいる。前回のチャンピオンですら出れるかわからない、日本でなら楽勝で出場できるコノネンコが予選の一回戦で敗退するというとんでもないレベルです。そして日本の大道塾でも、この前の無差別ではかなりメンバーが変わってきたなという感じを受けました。

ただ、正直言って、外国のレベルと比較して、さらに国内でも最近は総合格闘技をやっている選手は増えていのるで、プロの団体のレベルと比較すると、北斗旗の上位5人くらいは互角かと思うんですが、その下の人たちとはかなり見劣りするな、という印象を受けました。

かつての大道塾っていうと、空道(当時は格闘空手)で世界を引っ張っていたし、総合格闘技でも日本国内は修斗などと先方のルールで互角に闘っていました。でも近年は、入門してくる選手も、総合やキックとかの各ジムに流れて行ってるんじゃないかな。そういった各流派は、プロだけじゃなくて、アマにも力を入れていますからね。アマの総合や武道やというだけでは、魅力を伝えにくい難しい時代になっています。

そう考えますと、清水選手は大道塾の本流、つまり寮生あがりで、組み手もかつての大道塾のものをやっていますね。そういった選手は本当に減っています。藤松選手はもちろん寮生だけど、組み手の型が違うし。昔の組み手っていうのは、要するに極真から来た流れがあって、長田さん、山田さん、市原さんとかを経て稲垣さんが完成させたのがじゃないかと思うんですけど。がんがん殴り合ってですね、力で押し倒すみたいな。でも藤松はそうじゃない。上位5人のほかの選手も、まあ華麗なんだけど、迫力は昔とは違いますね。

そうしてみると、この間の大会での清水選手は、かつての大道塾のスタイルも持っていながら国際的な大会にも通用するような、最後の1人ではないかと思えました。そういう意味では、過去のことも知ってるし現在のことも知ってる、歴史と世界と他流に現役では一番よく通じているんじゃないかと思うんですよ。この前の大会の決勝では藤松君にやられちゃったけれども、会場からは「清水コール」が沸き起こっていたでしょ?ああいう雰囲気は、第一回の世界大会決勝の稲垣さん以来じゃないか。昔のスタイルには、観客は感銘を受けるんですよね。それて、いろんな話を伺えると思ったわけです。


2006無差別を振り返って。平塚選手は・・










 前置きがちょっと長くなっちゃいましたが、そういうわけで、この前の大会から伺いたいんですが。繰り返すと、僕の印象のまず1つめは、上位の5人、笹沢、清水、藤松、稲田(卓也)と平塚、この5人は抜けてるということです。別の言い方をすれば、ベスト8は一発があるんだけど、さらに5人は「穴がない」っていうことなんだけど、それについてはどう思いますか。実際に闘っている選手としてはどういうふうに感じているんですか?

清水:そんなに強いんですかねえ、わかんないですけど。自分は今回平塚と勝(早稲田)と初めて当たって、あんな感じで後輩と直接激突するっていうのは初めてですから。その辺はよかったんですけど。勝は初めてなんで、しょうがないでしょうねえ。一段一段勝ち上がっていって、ああよかったっていう感じだけだったと思うんで。でも、平塚はどうしたのかな…って。まだ本人に聞いてはいないんですけど、あの日はなんか…

ーー:様子が変だったね。僕はちょっと立ち話したんだけど、その時は冷静だったのに。

清水:そうですね。なんかあんまり倒そうとしてこないんですよ。慎重になってたのもあると思いますけど、やっててすごく楽で、全く負ける気がしなかったです。で、なんでだろなと思って。うーん、まあ、彼がいろいろと考えてるのはわかったんですけど、最後かもしれないわけじゃないですか。直接、自分と当たるのって。大道塾って歴史的にそうなんですけど、直接先輩を叩いて世代交代するチャンスは中々ないんですよ。














平塚洋二郎選手


ーー:市原・長田戦だって、結局市原さんが黄帯で北斗旗に出た時に1回あるだけでしたからね。

清水:そうなんですよ。だからなんて言うんですかねえ、もう自分とかを倒せば、「清水を倒した」っていう結果が残るわけじゃないですか。なんで、なんか理由があるにしても、「この野郎」ってこっちが思うくらいやってきてほしかったですね。

ーー:それでも平塚君は、その「下」の選手たちよりは断然格上だったでしょ?

清水:ああ、それは全然、上です。ただそれは上って言っても、今の北斗旗は昔だったら絶対出られない選手も出てきてるわけですよ。自分は無差別に初めて出た時は嬉しくてですね。昔は、無差別予選で3回勝たなきゃ出られることが確定しなくて。

ーー:黒木(マグナム・トーキョーの)にしても、寮生なのに結局は全国大会には出られなかったよね。それくらいの難関だった。

清水:3回ですよ。無差別予選3回勝つって中々難しいですよ。あの頃は関東予選で60人以上出てた事もありましたから。

ーー:今回、予選で一勝もしてない選手が3人いましたよね。

清水:でもそれも、選手に罪はないんですよね。出場枠を満たすために出てもらわなきゃ大会が成立しないし、ただやっぱり、試合を見に来た人に「何だこれ」って思われるのは自分は絶対いやなんで。自分はその気持ちだけはあるんですよ。他の選手の人たちにはあんのかな、わかんないですけど、多分あんまりないと思うんです、そんなに強くは。

ーー:まあみんな、ほんとに目の前の試合だけで精一杯という感じだった。で、新人が多数出てきてくれたのは結構なことなんだけれども。平塚にしても、それから笹沢もこの2、3年で出てきた選手だから、大学の四年生だけどまだ新人から中堅あたりですよね。笹沢君は予選で他流に負けたけどそんなに悔しがってる風でもないし、昔はそういう意味では先輩とあたったらがーーっと行くとかさ、他流派に負けるなんてとんでもないことだったでしょ。加藤(清尚)さんなんか、ライアン・シムソンとやって、勝てなかったけど当時打撃では日本最強と言われたシュート・ボクシングの吉鷹選手に「ハートが強い」って絶賛されましたよね。だからああいった淡泊さは信じられないことですよ、昔で言ったら。みんな死に物狂いで食らいついていった。そういうのが上位5人の中に入っている平塚や笹沢にも薄い気がするんだけど、これはどういうことなんだろう?

清水:いや、ありはするんですけど、もっともっと欲しいですよね。トップな訳じゃないですか。藤松は別格としても、平塚は超級でチャンピオンなんですから、大道塾のトップな訳ですよ。笹沢も軽重ではそういう立場の選手だし・・・それを言うとなんて言うんですかね…、いろいろなものを押しつけちゃう形になるから大変だとは思うんですけど。

ーー:ちなみに僕は平塚君については、ガオラでゲスト解説させていただいたときに朝岡さんから面白い話を聞いたんですよ。朝岡さんによると、平塚選手はこの間ロシアに塾長と行ってケリモフ・シャンハルと試合をして負けて以来、すごく考えこんでるんだと。対ロシアということで、組み手を変えようとしていて模索中なんじゃないかって言うんだけど。ただね、タックルを何度もしたでしょ?あれは意味がわからないよね。レスラーほどタックル強いとか早いわけじゃないし、タックルに成功したって空道の寝技は30秒しかないので、倒れるとちょうどガードポジションになっちゃう。それからパスガードするのに時間がかかると、マウントにもニー・オン・ザ・ベリーにも行けずに終わってしまう。何をやろうとしたんですかね。

清水:そう、それでその辺を話してないんですよね。なんかおかしかったとは思ったんですけど、試合の話はしてないんですよ。だからなんでああなったのかっていうのは・・・聞いとけばよかったなという気はしてるんですけどね。でもロシア遠征レポートにも書きましたけど、藤松でない限り、平塚が勝てない以上、他の誰がケリモフとやっても結果は同じだったと・・・あっ、長野先輩なら勝ってたでしょう。

ーー:平塚君、ある時期に、柔道的な組み方がうまくなった時期があったでしょ。沖縄にいたときに琉球大学の柔道部で稽古したんじゃないか、って話を聞いたんだけど。小外掛けとか、結構うまかったですよ。今回はどうして出さなかったのかな?外人には通用する技じゃないので、入れ替えてるってことかもしれませんが。

清水:でも、大道塾で組み技がうまいっていっても、それが外でも果たしてうまいっていえるかというと・・・・てのはあるんですよ。強いかどうか、わからないですね。 30秒なわけですよ、30秒なのに1本勝ちがこんな多すぎるのは結局…

ーー:ガードが弱い?

清水:いや、それ以前に、実力が全然違うんですよね。30秒でぽんぽん1本が出るっていうのは。もちろん、あれですよ、立ち技から流れを作っていって、ぱっとそのポジションを取れれば30秒以内ってのも充分ありうるんですけど・・

ーー:そこまで考えててできる選手は何人もいないからねえ。

清水:なんかふっと入ってあっという間にとか、すごく多いんで。

ーー:僕が最近出稽古している東大柔道部っていうのは七帝柔道だから、昔の高専柔道ルールで稽古しています。15分間延々とやって、東海や国士とでも引き分ける役の選手を養成してるわけね。それから言ったら確かに30秒なんかで取られるってのはありえないですね。寝技だけに専念して稽古させれば、全日本クラスの選手と対戦しても、先方があまり寝技は得意でないならば5分くらいならなんとか持ちこたえる選手を作れるんですよ。だから言われてみると、30秒で取られるってのは、まあありえない。
平塚君は何を考えてたんだろう。その日によっても調子の善し悪しあるじゃないですか。それとも違う?

清水:とにかく、あれですね、何も感じなかったというか。あの日は全体的に感じなかったですね。稲垣先輩がよく言うんですよ、「みんなうまい」って。でも、怖くないんですよ。おっかない人がすごく少なくなった。ほんとにギリギリの戦いをするような、そういうんじゃなくなったんですよ。 空道という競技として良い試合は多くなってきたんですけど。

ーー:市原・稲垣路線ていうのは、とにかくそれでしたね。怖い人たちだった。

清水:忙しくてたまにしかいらっしゃらないですけど、来た時とかは違う稽古になっちゃいますからね。それなのに、稲垣先輩が来られない月曜日でも、最近は選手なのに来ない人が多いんです。
昔は、総本部は強かったわけじゃないですか。そんなのありえないっていうか、常識外れなことをやってて、それで強かったっていうのがあったんで。時代が違うし今後は違うことをやってかなきゃいけないんでしょうけど、どうしたものかなっていうところです。ただ本部所属の一般選手なのに月曜日クラス出ないで試合する人達にもっと出て来てほしいです。うちらとやってれば予選の選手はそれより楽なわけじゃないですか、本当に北斗旗目指すならなんで出ないのかな?と思います。兵頭さんなんて42歳ですよ。そんな人が頑張ってるんだから一般で出る若い連中なんてもっと出来るはずです。一緒に稽古してなくても総本部の選手には簡単に負けてほしくないし、変にチームみたいに小さく固まってないでもっと色々お互いが学び合うみたいになったらいいなと思います。

ーー:じゃあ、大会では藤松とあたる所までは、そんなに怖いというか、ギリギリの試合はしなかったっていうことですか?

清水:そうですね。自分はそんなに「技が多彩で」とかいう感じではないじゃないですか。やっぱり気持ちだと思うんですよ。今は気持ちの折れないやつがあんまりいない…ちょっと競ってくると諦めてしまうんで。追い込んでいっても諦めないやつっていうのが一番やっかいですよ。

ーー:そういえば対平塚戦だったかな、清水君は相手のパンチをわざわざ待って、右フックをかぶせて打ち返してたじゃない?稲垣さんが得意にしているパンチだけど・・・

清水:単純にあれは避けられなかっただけ…

ーー:いや、避けられなかったっていっても、仰け反った訳じゃなく、カウンターを打つかのように返していたじゃない。あれも気持ちだよね。ああやられると、打った側は「この相手は気持ちが折れない」って印象づけられるじゃないですか。最初から気持ちで負けないって決めてるからああいう感じになるわけでしょ。

決勝で沸き起こった「清水コール」

清水:距離をとって闘うっていうのは、自分は無理なんで。もっとうまい人はいっぱいいるんで、向こうが考える時間を与えないようにするのが自分のスタイルなんです。あと今回も、大勢知り合いが応援に来てくれてて。自分がチケット売るのは、関東は3割だけなんですよ。全部で80枚買ってもらえたんですけど。

ーー:どんな割合で売れたんですか?

清水:関東は30%くらい、あとは長野とか新潟とか群馬とかいろいろです。

ーー:でもディファで80だったら、かなりのもんだよ。代々木第二だったら3000も入るから目立たないけど。

清水:それで、交通費が1万、2万、3万かかってるやつもいる。それでも来てくれるんですよ。やっぱりそれがすごくありがたいなっていうか。中にはほとんど会ってないのもいるし、年に1回会うか会わないかっていう人もいるんですけど。
自分、6年以上同じ所に住んだことがないんですよ。仕事もやっぱ、これ(空道競技)を続けるめに転々としてて、それなのに世界大会とかにちゃんと来てくれた人っていうのは、ほんとに繋がってる人間だと思うんですよ。たまの休み、週1のやつならば1日つぶれるわけですよね。それなのに来てくれて、「来なきゃよかった」って思われたら絶対嫌ですから・・・この前はそれが特に強かったですね。

ーー:稲垣さんは1回戦から観客席で清水選手に大声で声援していて、で、何言ってるかと思ったら「殺せ〜殺せ〜」って。非常にわかりやすい。会場まで来たら、いまさら技術じゃないだろう、ってことなんでしょうけど。あれも言いたいことはよくわかる。その気迫で行けってことなんだけど。清水君もそれに応えて、前にがんがん出ていましたね。対照的に、藤松選手はそういう気持ちを消しちゃうところがあるでしょ?それはそれで、彼ならではの武道なんだけど。そのせいか、決勝は清水コールが一斉にわき起こった。
だけど今回あんまり気持ちが前に出てるんで、ひょっとして引退するつもりじゃないかとまで思った位ですよ。それはお客さんを呼んだからだったんですね。

清水:呼んだからっていうか…自分は最近、気持ちを同じ状態に維持しにくくなってて。とくにスパーリングはやりたくない時は休みたいっていうか…。職員て毎日がそういう生活じゃないですか。この日はこれをやんなきゃいけないって決まってるんですよ。それがずっと続いたんで、自分は凡人ですからやりたくない日は休みたいんです。甘いって言われるかもしれないんですけど、逆にのってる時にがーっとやりたいんですよ。なかなかそういう風にはいかないんで、結構気持ちをコントロールできないところがありますね。

藤松流武術をどう見るか

ーー:それはフルスパーだからじゃないのかなあ。軽くだったら毎日でも平静にできるような気もするんだけど。もっとも、若い時期はがんがんやった方がいいとは思います。いったん、いやな時もやっておかないと、試合で気持ちがついて行かなくてもやるときはやるしかないからね。
それにしても、久々でしたね。あんなに盛り上がった決勝ってなかった。また終わり方が劇的だったんですけども、藤松選手をあそこまで本戦で追いつめたのは、ここ数年の日本人では久しくなかったんでね。それで本戦のあの右ストレートはどうだったの?ガツーンと来たよね。

清水:あまり覚えてないんですよ。確かに当たったとは思ったんですけど。効果になるような当たりだったら普通はそんな気がするんですけど、その時はちょっとわからなかったですね。あの試合は、細かいところは覚えてないです。必死だったんで。ほんとに隙がないんですよ。
だから平塚とやった時にはドロップキックみたいなのも出せたじゃないですか。 あれも藤松とやったら出せないです。大丈夫だと思ってるから、やってるとこがあるんですよ。藤松とやった時はほんと遊びの要素が…遊びの要素ってのも変ですけど、その余計なことができないんで。ほんとに最短で当てるにはどうするかってことしか出来なかったんで。となるとやっぱ自分はローキックですよね。

ローキックだけはぱっと先に当てられる技ですから。比較的、足の方が当たるってのは藤松と練習した時にわかってたんで。これも次はやれるかどうかわからないんですけど、だから自分の手としては蹴ってくっていう。ただ単純に距離的な問題だけじゃないんですけど。















藤松泰通選手


ーー:小川英樹っていう選手は、単に技術だけが強いんじゃなくて、精神的に相手を追いつめたりするじゃないですか。足払いして恥をかかせたり、相手がそれでカーッとなって突っ込んできたらひっくり返すとかして、ますます頭がもうでんぐり返るようにしちゃうとか。

藤松もそういうところあると思うんだけど、今回初めて清水君が先にポイント取ったでしょ。それで藤松がそういう追いつめ方をできなくなったんで、会場は沸きました。

藤松は一体ここで何をやるんだろうって。彼は間合い合戦みたいなことを日拳相手の時はやらなかったでしょ?自分よりパンチのレベルが低いと思ったらああいう間合い合戦に持ち込んで、自分が一方的にうつようなことやるんだけど、それができずに組みに行っても自分が一方的に勝っているわけでもない清水君に対して、延長で一体どうなるんだろうって。 

それで延長はどんな感じだったのか教えてほしいんですけど。

清水:とにかく勝つとか負けるっていうのはあまり考えてられないくらいでしたね。ほんと、いっぱいいっぱいだったんで。今出来ることをやるっていうだけでした。ただ、行けそうな気はしたんです。組んだ時も、一回ガードになった時も、あ、これなら取られないなと思ったし、組んでも投げられることはないと思った。

やっぱりこう、ガンてやった時は絶対大丈夫だって思ったんで。組んで大丈夫なんだから、後はパンチを当てられないで打ち合ってれば、あのままで勝ってたじゃないですか。今思えば。 
だけど、息が全く切れてなかったですよね。延長入る時に。

ーー:藤松君はこの数年間、息が全くあがってないよ。

清水:それはそうなんですけど、あの試合は結構動いてたわけじゃないですか。それでもやっぱり…あいつとしてはいつも通りなんですけど。でもそれをちらっと見た瞬間に「やばいな」って思っちゃったんですよね。自分もそんなにいっぱいいっぱいじゃなかったですけど、息は上がってて、向こうは全然涼しい顔してるじゃないですか。

ーー:でも、そう思ってること自体がすでに彼のペースになってるんじゃない?

清水:いやそうですけど、実際そうじゃないですか 。

ーー:それはそうなんだけどねえ。でも何か変な分析をしたら、彼のペースにのっちゃうんじゃないの? 藤松は、心理的に追いつめるところにあるから・・

清水:そ、そうですけど、普通の感覚じゃないですか。あーあいつ楽そうだなって思って・・

ーー:でも脇から僕らが見る限りでは、藤松は間合い合戦はやめることにしたようだったよ。

清水:そうですね。最初見た時に流れが変わって、空気が変わったんですよね。

ーー:藤松君は本戦で膠着したときは、延長までの時間で、顎に手を当てて、「はてな」みたいな顔をするんだよ。去年の春の予選で日拳の選手とやって、延長で組みから寝技に持ち込んだけど、あの時も考えて、流れを変えたんだよ。何か考えてるんでしょうね。全然違うことするのを。

清水:とはいえ最後はきちっと決まるじゃないですか。あれがやっぱり ・・

ーー:そこを教えてほしい訳。どんな感じだったの。

清水:今あいつのやってることって、実在する術理なんですよ。やればわかりますけど否定できないんですよ。

ーー:でも、あれをできた人は他にいないでしょ?だから藤松が自分で出来てるだけですよ。

清水:それはそうですよ。でも、避けられないですよ。だって自分もあらゆることをやってきて、いろんな稽古もやったし、強い人とも練習してきたし、その上で回避不可って言ってるんだから信じてほしいですね。ちょっと。

ーー:いや僕は何も否定してないよ。

清水:他の人達ですよ。雑誌とか。全然わかってないですよ。

ーー:だけど否定も何も、彼はみんなに見せてるじゃない。

清水:あれはただの大外だっていう捉え方をしてるじゃないですか。ただの大外じゃないんですよ。

ーー:ああ、そのことかあ。それはその前の組み手から全部そうじゃない?仕掛けてあるんだと思う。どうやってるかは分からないけど。だけどさ、1つ聞きたいのは、藤松選手はノックアウトはないよね、パンチでは。あれはどうなの?

清水:そうですよね。だけど、まだ入り口らしいんですよ。藤松は、やろうとしていることの入り口に到達したっていうかその程度なんですよ。あいつは自分で言ってるんですけど「白帯」なんですよ。白帯レベルで・・

ーー:あそこまで行くんだ。

清水:勝てないわけですよ。うちらは。それに、今でもかなり強くなっていってるのがわかるんですよ。そう言っちゃだめだって気持ちもわかるんですけど、自分だってある程度やってみて、気のせいとかある訳ないんですよ。

ーー:僕は別に気のせいとか思ってないよ。清水君は藤松君がやっている武術はやらないの?

清水:いや自分がやるんなら、今までやってきたことをゼロにしなきゃいけない訳ですよ。全く関係ないというか逆なんで。・・・らしいんですけど。

ーー:いいんじゃない、それで。強くなれるんだったら。

清水:そりゃそうですけど、今を捨てきれないで中途半端な気持ちでやっても、強くなれないわけじゃないですか。
以前稲垣先輩と話してたんですけど、やっぱ試合とかでも人生の一部分ですからね。 実際は、自分はほかに何をどうすんのかとか考えなきゃいけないじゃないですか。終わった後に何にもないわけですからね。ハッキリ言ってもう遅いくらいですけど。自分の、この先です。ちゃんと考えないと。
本当は強くなるという事と同時にそんな部分も解決するようなものが理想だと思います。

ーー:なるほど。だから、全部捨ててやり直している場合じゃない、と。
では、藤松戦に戻して、組みにきた瞬間は、どんな意識でいた訳ですか?

清水:普通に距離とかつめてくるじゃないですか。あの瞬間は「来るな」と思ったんですけど、その後が記憶はあるんですけど、金縛りみたいな感じですよね。体が動かない。

ーー:「ゼロ化」ってやつなのかな?宇城武術で言うところの。あの日は、さっき言ってたみたいに組んでも大丈夫だと思ってたわけですよね。その前は。

清水:ああ、大丈夫だと思いました。行けるな、と思って。だから、だったらじゃあ顔にパンチを当てられなければ勝てるとは思いましたね。

ーー:藤松は最初からあの投げは出せなかったんですかね。本戦とかでは出せなかったのかな。

清水:まだすぐに使えるというレベルではなかったんでしょう。だってあれがすぐに思いのまま出せるんだったら、全部30秒で極めていけると思います。

ーー:ということは、あれは藤松にとってもやばい試合だったわけね。あそこでどうなるかわからなかったけど、出してみた訳だ。それで出来ちゃったと。

清水:出してみたという概念もなく出る技だから反応できない、ただあいつが負けるってイメージすることができない。人はイメージした事以上の事は絶対実現できないと加藤先輩も言ってるんですけど、自分もそう思うんですよ。やっぱり・・・

ーー:負けるイメージを持っていないの?

清水:多分そうです。自分の場合は絶対勝つ時って(例えばロバーツ戦、ラトビアのワンマッチ大会、アマキックの全日本)、負けるって意識が全くないんですよね。頭の中に。
(藤松は)一瞬も負けるって思ってない状態でやってるから勝つという結果のみなわけですよ多分。もう6年くらいですか、負けてないわけですよ。負け方も忘れちゃってるくらい。だから勝つっていうストーリーしかもはやないでしょうね。それも強さだと思いますね。大怪我もしたじゃないですか。覚悟が違うと思うんですよ。

ーー:あの怪我でどっかに行っちゃったのかな?別の世界に。

清水:強打が頭に当たったら命がなくなるかもしれないわけですからね。うちらとじゃやっぱり違うわけですよね。パンチに対する「避ける」っていう意識が。自分なんかはまあ、当たってもしょうがないかなってのはある。あんな怪我があると当たれないですからね。避ける動作ひとつとっても必死っていうか。違うんじゃないかと。
あのスタイルを批判する方には実際やって二発連続で当ててみてほしいです。ここで言った事も闘えば全部分かってもらえますから・・・。

ーー:それで技術なんだかよくわからなけど、金縛りにあってしまったと。

清水:そうですね。これはもう言わないというか、これで終わりです。自分には事実ということだけははっきり言っておきます。

ーー:いわゆる柔道のただの大外じゃないということですね。

清水:信じない人と信じる人、完璧にわかれますね7:3か8:2くらいで。当然ですよ信じない人にしてみれば「昨日スカイフィッシュ見たよ」って言ってるようなもんでしょうから・・・。

ーー:僕もあれは柔道じゃないと思う。藤松君を学芸大に連れて行って、インターハイに出た選手たちと一時間連続で乱取りしたんだけど、全然投げられないんだよ。オリンピックのコーチが最初は「軽く投げてやれ〜」とか言ってたのに、次第にあきれちゃって。藤松君はしかも、その時に稽古をしたことも忘れちゃったらしい。なんというか。

清水:大外じゃないですよ。今自分がDVDを単純に第三者的に見て「何してんのかな」と思いましたよ。腕十字だって、あれで取られないですよ、普通だったら。だけどあの時は取られたんですよ。普通はああいう状況で負けたら何してんだろと後悔してるんですけど、あの試合に関しては、それは全くないです。

ーー:膝十字も怪我さしたし、無差別でみんなに怪我させてるもんね、藤松選手は。

清水:膝十字は自分現場で見てて「うわーシャレになんねえなこいつ」と思ったら、DVDで見たらタップした瞬間に離してるんですよ。だから、叩いてるのに締めまくったとかそういうんじゃないんです。
この相手の今里選手は試合中気合が伝わってきて凄く良かったですね。最近の選手では久しぶりに感じました。

ーー:でも清水選手の今回の戦いと藤松選手のとでは、陽と陰っていうか、藤松はある種「陰」みたいな試合をするので、気迫をこめて清水君が追いつめてくれたから盛り上がりましたね。藤松君にはそういう客の共感を呼ぶところが薄いから・・

清水:でも笹沢戦とかは盛り上がったんじゃないですか? 会場の感覚ってのはわかんないんですけど。座って見ないと。

ーー:おもしろかったのは、笹沢がジャブで牽制したことでしたね。ずーっとジャブ出し続けたんで、藤松君の間合い合戦にのらなかった訳です。間合い合戦にのったら藤松君は何ということもなく勝っちゃうだろうから。

清水:考えてましたよね。他の選手と違って。他の選手はあまり考えてない・・・というか見当違いなんです。

ーー:笹沢は柔道に関しては藤松より実績が上だからね。寝技も変わんないと思う。それ「だけ」を取れば。だから笹沢としては、打撃を凌いだら何とかなるって考えたんじゃないかと思うんだよね。藤松君のペースにのらないように延々とぐるぐるまわってずーっとジャブ出してたんで、藤松君が間合い合戦はできなくなっちゃった。でもそれでも難なく終わっちゃったから、やっぱり藤松はすごいなー、とは思うんだけどね。

清水:高松先輩も言ってたんですけど、あのローキック、受ける相手が素人みたいな受け方してました。ちゃんと技術を持ってる選手なのに、腿の裏で素人みたいに受けてたり。あれとかも不思議ですよね。

ーー:タイミング的には相手が動けない時に狙ってるんでしょ、きっと。前足を下ろして動けなくなる瞬間に。それは僕もわかるんだけどね、だけど藤松君がすごいのは、あれと全く同じフォームでハイを蹴るし、パンチもミドルも蹴ったりするじゃないですか。昨日基本を一緒にやったんだけど、正面で見てたら前蹴りなんだよね、彼の回し蹴りのフォームは。普通の前蹴りに見える。

清水:最近変わったんじゃないですか?

ーー:でもあれ、T師範だったら基本のチェックで×つけるんじゃないかな?

清水:大道塾の教本通りにやってる基本かどうかって言ったらだめでしょうね。

ーー:最短距離で蹴ってるから、きっと前蹴りに見えてもどこかを回してるんじゃないか。回してる部分が普通と全く違うので、正面から見てると前蹴りなんじゃないかな。

清水:違うものにならざるを得ないんですよね。例えば肩を入れるのが普通の右ストレートなのに、「武術空手」では入れちゃいけない訳ですからね。

ーー:あれは何を言っているのかなあ。甲野さんの古武術の本やそれから派生した本を何冊か読んだんですけど、そこで言われているのは筋肉でひねったりねじったりしちゃいけない、骨格を平行にずらすんだということですよね。だから軸を中心に骨をずらすようにして動くっていうことじゃないのかなあ。古武術で解釈すると、昔、柴田国明っていう世界チャンプのボクサーがいたんだけど、そのアッパーは理にかなっていると・・・

清水:いやでもあれですよ、何かと同じものではないらしいんですよ。

ーー:そうらしいね。だとすると、藤松君がやってるのは、甲野さんから派生している古武術なんかとは違うっていうことになるのかな。だけど骨格で動くと、運動量がはるかに少なくなるのは間違いないんですよ。

清水:それも思いますよね。だけど、そういう説明が出来ないくらい疲れないんですよ。絶対ありえないくらいに。だたミットとかやるときついらしいですけどね。合宿の時には、世界大会の試合後よりきつかったって言ってました。ランニングとかも。

ーー:だけどそのランニングとかにしても、ナンバで走ると疲れないって言うじゃない?でも、あれで走ると太ももだけはきついよ。前傾して体重を使うから前に進むことは楽なんだけど、その代わり落ちる上体を全部太ももで受けるから、太ももがめちゃめちゃきついんだよね。普通は太ももを持ち上げて走るわけでしょ。じゃなくて受け止めて走るわけだから、そっちのきつさはすごい。そういう意味では汗かく。でも藤松君は汗をかかないからなあ。別のことをやってるんだろうね。

大道塾の指導は元々、ウェイトやって筋量を増やしてスタミナつけて技術を上回るっていうことになるんだけど、それだとビジネスマンクラスみたいな高齢者は若い者に勝てないじゃないですか。だから、筋肉でひねったりねじったりしちゃいけないという教え方は魅力的なんだよね。疲れないっていうのは。

清水:稽古は作り直さないとだめですよね。なぜなら、初期のルールと比べたら違う競技ですから、でも稽古方法はまったく同じで、今意志がバラバラじゃないですか。稽古方針でぶつかってるってこともあるんですけど、強くなってく方法って一人ずつ違うんですよ。大道塾の基本やって大道塾の移動やって、基本ルールからやって、4級とって顔面ルールになって、で強かったら、多分紛糾しないと思うんですよ。ところが勝った人の中にそれを全くやってなくて強くなった人もいたりするから何が正しいのかってなってぶつかってる部分があります。

ーー:僕は見ての通りストレッチも全部入れ替えちゃったからね。クラスごとに違うので僕はいいと思うけどな。みんな勝手にやれば。いままでのストレッチとかは若くて体の柔らかい人にはいいかもしれないけど、固くなってる僕らにはきかないからね。

入門のころと格闘技体験

清水:さっきの話の続きですけど、自分は昔の挌闘空手からやってるわけじゃないですか。

ーー:えっと、入ったのは何年ですか?

清水:入ったのは96年ですね。その前にリングスで7ヶ月。

ーー:へえ。どんな待遇だったの?

清水:練習生ですから、稽古ばっかりですけど。ただ、凄かったのは、休日食事するのに一食当たり一万円までOKでした。もう、寿司やらステーキやらしょっちゅうだから、飽き飽きするくらいでした。

ーー:そりゃあ豪勢だなあ。

清水:自分は中学生からプロレスラーになる事しか考えてなかったんですよね。他の進路とか全く考えてなかったんんです。で、他人とかにさんざん馬鹿にされて合格して入って、で、まあ失望することとかあって(リングスを)やめて・・

ーー:試合に出る前に辞めちゃったの?

清水:試合は出てないです。

ーー:なるほど。まあ、失望の内容は聞かなくても分かる人には分かるでしょう。で、辞めてからその間は何やってたんですか?

清水:都庁の清掃、コンビニ、焼き鳥屋、DAT製造のラインとかバイトですね。

ーー:格闘技は?

清水:その間、ちょっと極真やりましたけど。半年くらい。試合も1回出ましたけど2回戦で負けました。

ーー:それで大道塾の本部に入って、いきなり寮生になったんだ。

清水:そうです。ちょうど市原先輩とホイスがやった頃なんですよね。確か。やっぱりもう1回やりたいなと思ってた頃で、なんかきっかけがなかったんですけど、市原先輩が行く時に直前のインタビューくらいで「やんなかったら逃げたと思ってください」って言ったんですよ。UFC出なかったら。であの頃ってめちゃめちゃなルールだったじゃないですか。髪掴んでいい、金的もあり。目つぶしくらいでしたっけ。

ーー:目つぶしと…あ、違う違う。噛み付きがだめで、目はついてよかったんだよ。噛み付きと耳引っ張るだけだ、反則は。僕、市原さんと渡米数ヶ月前に2人でここ(西新宿)歩いててさ、彼はどう先生を説得したらいいか、なんて話してたんだよね。

清水:その「やんなかった逃げたと思ってください」って言葉ですけど、何ヶ月か後に本当にやるってことになったんですよ。自分は信用してないんですよ、芸能人にしろ有名な人たちの言うことは。有言実行っていうか、言ったことをちゃんとやる人ってあまりいないし大部分は話題作りで言ったりじゃないですか。
その頃は実際に使えるかっていうのが自分にとって一番重要なところだったんで、やっぱり極真やってる時もなんか疑問だったし、柔道も正直疑問だったんですよ。もちろんルールという部分のみです。柔道とかトップってすごい強いじゃないですか。県大会のトップとかとやっただけでも強かったんで、それが全国とかメダリストとかになると・・・

ーー:柔道はいつやってたの?

清水:高校の時です。

ーー:どのくらいのレベルで?

清水:全然ですよ。県大会くらい

ーー:こないだの試合の出足払いはよかったよねえ。

清水:そうは言ってもやってはいましたからね。

ーー:相手のレベルが何であったとしても、あの出足払いは、相当うまくないとできないよ。
普通に柔道家に見せてもうまいって言うもん。あれはたいしたもんだと思いましたよ。じゃあ、それまでいろんなことをやったんだ。柔道もやったし極真もやったと。ところが実戦性には疑問があったところに大道塾の看板を背負って市原さんがバーリ・トゥードに出て行ったと。

清水:何をやっても違うと思っていたんで・・極真はジャブが当たる距離から始まるわけですよね。

ーー;まあおかしな距離ですよね。

清水:あと蹴りも何でこう、膝から上から撃ち落とすかっていうと、距離がそういう距離だからですよね。膝かかえないと当たらないんですよ。でも実際、それで実戦いけるかって言ったら、上から撃ち落とすような下段なんて、顔面じゃ使えないですから。だからそういうのも考えていくうちに、最初のWARSのビデオとか買ったりして、「ああこれが一番近いな」と思ったんですよね。
あっ、でも弱いって意味ではないです。乱闘みたいな感じだったら絶対強いし、茶帯でも凄いレベルでしたから。人格的にも素晴らしい方が多かったですし、高久昌義先輩は今でも尊敬してます。

ーー:あの方はすごく澄んだ瞳をしてるんだよね。八巻さんとご一緒させていただきましたよ。で、大道塾に入ったと。僕も清水君は高山さんのお宅でビジネスマンの懇親会でお会いしてるね。ではあの頃みたものってどういう光景でしたか?寮生として見てきたものは。

清水:あの頃はまだ本部に自分も含めて8人職員・寮生がいたんですよね。高松先輩、長谷川先輩、中山先輩、斎藤先輩、寺本先輩、野原先輩、加藤裕嗣先輩、今は人いないですよねえ。だから早い話が、道場生が来なくても練習になるんですよ。それだけいれば。あとやっぱりガチでしたね。あの頃は。

ーー:知ってる。だって稽古に言って泡吹いて倒れてるやつたくさんいたんだもの。

清水:そうですね。よく救急車来たりしましたもんね。今やったら絶対成立しないんでしょうけど、でも昔の大道塾ってあれなんですよ。そういうふるいにかけられて残ってるやつしかいなかったから当然強いに決まってるんですよ。そこに「どうやって強くなるか」っていう、話が加わって。もともと強くて才能のあるやつがやってるんですよ。今は逆に普通の人をどうやって強くさせるかってことじゃないですか。


選手への注文

ーー:その意味では、昔は指導システムがなくてもスパーで強くなったからね。今はシステムがないと強くならないんですよ。

清水:前のやり方でやってたら当然、絶対人は集まらないし、そこはわかってるんですけど自分は多少そこを担当しなきゃいけないっていうか。全部がそうなっちゃったら…
例えば他の支部のやり方とかだったら色々あっていいと思うんですけど、本部までが全部なくなっちゃったら、なんて言うか複雑ですよね。

こんなこと思ってる人もいないと思うけど、なんていうか昔の感覚というか、今は森先輩が遠くで支部を始めちゃったし、高松先輩も始めちゃったし、斉藤先輩も来ないし、だからもう誰もいないですからね。山崎先輩とかはかろうじて、稲垣先輩とかもいますけど・・現役となると自分しかいないんで・・自分もできてるかわからないですけどね。

ーー:僕らから見ると、要するにプロな訳ですよ、寮生っていうのは。でプロ以外の選手っていうのはお客さんな訳ですよね。ボクシングやキックのジムなんかは、昔はプロしかいなかったでしょ?そのプロモーションだけでやっていけたから。でも人気がなくなってきて、空いた場所に素人のレッスンを入れるようになった。これは実は空手がやってきたこととと同じですよね。この十年くらいかな。

でも、そこでプロがアマを殴るなんておかしいでしょ。アマのトップ選手ならともかく、プロがお客さんを殴るのはおかしい訳ですよ。お金払ってもらってるんだから。で、その相手が望んで殴ってくださいってんならともかくそこまで強くなることを望んでなくて、ちょっと試合に出たいくらいで、試合に出たら覚悟はあるかもしんないけど、普段まで殺されたくないと思ってる人を殴るのはちょっとまずい。お金を得ている社会人としては。だからそれに不満を持ってるなら、それはちょっとお門違いじゃないかという気が僕はしないでもない。

清水:いや違います。不満じゃないですよ、それを残した方がいいんじゃないかってことです。1日とか・・、でもやっぱり危険な事をやってるのだから最低限の稽古の「量」は必要です。

ーー:いやいや残した方がいいのは分かるんだけど、それはあくまでプロのクラスであって、そこに人が入ってこないのは営業とかが悪いんで、アマに強いることはないんじゃないかっていうことなんです。問題はプロに人が入ってこないことなんですよ。

清水:今はいないですからね・・

ーー:寮生がいないことが問題。だから他のやつらに求めてもしょうがないですよ。
だから今後の問題は寮生をいかに増やすかですよ。増やすシステムを作るしかない。

清水:ただ今は無理です。来ないです。あ、堀越が来ましたけど。











総本部寮生の堀越君


ーー:彼はなかなか気がきくよね。でも、20年前は最前線にあったんですよ。格闘空手なり、空道は。それ自体はルールとしていまでも通用しますよ。商品は良いのに、売れない状態なんだよね。それって、営業が悪いっていうことでしょ?

僕らがシステムをどんどん進化させて行ってですね、観客も要望を受け入れて大切にしてきたなら、代々木をある程度までは埋めることが出来たと思うよ。でも、観客にはほとんどまともにサービスしなかったし、パンフは金とってるのにメチャクチャだし、進行もうまくないし、見て楽しめないようにわざわざしてる。もともと面白い競技でしょ?

清水:面白いですね。わかる人が見たら。

ーー:うん。たまたま来てくれたお客様に帰れといわんばかりの扱いをして、みんなが嫌になって来なくなって、ネットにそれをボロクソ書かれると。どんな商品だって売れないですよ。好意を持ってる人も遠ざけたんだから。 本来いい商品なんだから、15年くらい前から毎年当たり前のように改革していればお客は維持できてたと思いますよ。もちろん、ある所で増えなくなる時期は来たと思うよ。総合とかがでてきたから。

清水:うーん、ただどっちにしても集めるのは難しいと思いますね。 最近、似たような境遇の人とか会ったりして、そんなに莫大な金額もらってる訳じゃないんですけど、彼らのモチベーションっていうのはやっぱり人前でやったりとか、ファイトマネーで。それはうちらは関係ないっていうか、それが最終目的じゃなくてっていうイメージでやってた訳ですよね。だけど今の世代っていうのはそれがないとだめな人間がすごい多くなってるんで・・

ーー:でも昔の大道塾はかなり露出してたでしょ?

清水:そうです、だからあの当時に入ってきた寮生の人たちっていうのはそういうのがあったと思うんですよ。例えば雑誌に載ってる有名な団体ってことで知って入った。でも今は逆にそれはないわけじゃないですか。

ーー:ほとんど何にもないからね。

清水:その部分は何もないです。

ーー:何もなくって、お金ももらえなくって、で面つけて顔が見えなくて…、何もここに来る理由がないと思うんだよね。それは人情として当たり前でしょう。僕だって、人生賭けてやりたい人には勧めないな。その意味でも藤松君は特殊なんだろうけれども。

ただねえ、マスコミに出ないって言ってもね、先方だって情報を売って商売にしているわけだから、人手を割かなくていいなら、載せたいんだよ。マスコミには当日にこちらから結果をFAXすればいいだけだし。かかってきた電話はちゃんと対応すればいいんだし。それを対応しないから、載せてくれなくなっただけで、自分で拒否しているようなものでしょう。僕自身はマスコミで仕事しているけど、普通にしているだけで仕事は回ってきますよ。僕程度でも雑誌で評論とかするわけだから。半日記者を煩わせれば二ページが埋まるんだから、誠意もって面白い話題を提供すればいくらでも載せてくれますよ。それを見て寮生もやってきたんじゃないかな。

清水:そういうの必要ないっていうほどメジャーになってないというか・・・僕が大道塾を知ったのは、市原先輩が優勝したときだったわけですよ。それは何でかっていうと、すごく露出してたんで。だからこそ気づいた訳じゃないですか。もし今みたいなら、多分すぐには惹かれたりしなかったと思うんですよ。若い二十歳そこそこの連中が、ばっと惹かれるというのは最初それだと思うんですよ。

ーー:最初は素人なんだからね。当然。

清水:だから、最初はそれでいいと思うんですよ。入り口は。入ってからだんだん変えていけばいいだけの話で。だから入り口にまでも入ってこない感じですかね、今は。

ーー:その時に思った、清水君が大事に思ってる挌闘空手ってどんなもんですか。まあがんがんやったことは一番なんだろうけど。他に精神とか何かありますか?

清水:やっぱり当時の先輩達に比べると、今の選手って、強くなる方法を練習してはいるんですよ。でも、自分で考えないんですよね。自分で試合に出た時どうするかっていうのは、例えばベンチプレスやるとかミットやるとかそうじゃなくて、そっから上のことを考えなきゃいけない訳じゃないですか。戦術をどうするかとか。ミットの蹴り方をどうするかとか。重りを挙げるにはどうするかとか。そこまで全然頭が働かないですよね。そもそも自主トレやらないですからね。定時で週2回やって試合出る訳ですよ。一般で北斗旗予選に出るのに週4時間ですからね・・・。

ーー:僕の半分だな、そりゃ。

清水;だから彼らの「試合に出る」っていうのは何なのかなと思うんですよ。 だって練習してないから。ほんと一生懸命やって負けたら残念だったなとか惜しかったなって言えるし、ほんとに一生懸命練習してるやつが怪我したら「大丈夫か!?」とか言えるけど、今のやつら怪我して負けても「そりゃあ無理でしょ」って言うしかないですから。

ーー:飯村さんも言ってるけど、毎日来ない奴は稽古したうちに入んないと。あのいわゆる技術派だと思われてる飯村さんが、強くなるにはどうしたらいいかと聞かれて、「稽古することだ」って答えるんです。シンプルですね。

清水:飯村先輩がそう言うのはわかります。自分は大道塾好きだし。飯村先輩も好きだと思うんですよ。いろいろ言ってても・・・

ーー:いや飯村さんも加藤さんも大道塾がすごく好きなんだよ。加藤さんが他流にコロコロ負けた選手に怒ってるのだって、好きだからこそだから。過去の大道塾のタイトルを取ったことにはプライドがあるからね。

清水:でも、今もそういうふうに思ってやってる人間もいるってことだけは、分かってほしいです。

ーー:その通りですね。しかし他流になめられたくない人は、清水君も含めて、だからこそ出稽古で他流とガチで稽古しているわけでしょ。それで内部には苦言を呈してるわけだからね。内部では飯村さんや加藤さんはキックに見えるかもしれないけど、外から見たら、飯村さんと加藤さん(と映像の中の藤松君)が大道塾なんだからね。彼らが大道塾の看板として出稽古して、相手から「これは強い」と思われているんだから。他の人については、格闘技界ではほとんど話題にもなっていない。

清水:自分もそうですよ。自分も「なってない」と思わてるかもしれないですけど、でもそんな中でもやってるってことだけは先輩たちにも認めてもらいたいです。そういうやつもいるわけじゃないですか、わずかでも。自分はなめられたくないですよ。

この前の無差別には、他の競技の人も見に来てくれたんですね。レスリングやってる人とか。でもその人たちも決勝とか単純にすごかったって言ってました。ある程度やってる人たちにも「すごかった」って言ってもらうことができたんで、それは良かったと思います。








総合の浜中和宏選手

ーー:そうですね。ベストエイト以上はそれだけの評価に値すると、僕も思います。ただ、僕がなめらると危惧したのはベストエイトではなく、もっぱら一回戦ですね。だって、全国大会で地区予選もやってるのに、一回も勝たずに本戦に出てる人がいるのはまずいでしょ?当人が悪いんじゃなくて、運営側の問題だけど。

清水;いや32人でもいいと思うんですけど・・それでKOする技術があるって感じるかっていったらそうでもなかったし。

ーー:柔道や柔術がベースの他流相手に、ガードで上になって不用意に手を出して十字にとられる奴がいたりしてね。中井さんのビデオの一番最初に、「ベースつくれ」って出てくるじゃない。不用意に腕を伸ばさずに両襟を片手でつかんだりしろって・・

清水:無理です。でもそれが彼の強さでもあり…

ーー:片手で相手を持ち上げて凌いだりするからねえ。それは大したもんだ。

清水:中々出来ないですよね。でも、もうちょっと考えないと、技を。って言ってるんですけど毎回同じですね。でも天性の強さはありますよ。あそこまで行けるんだから。ただあれ以上はいかないですね、今のままだと。って言ってても直らないですね、全然 。

ーー:ところで、空道は国際化しちゃったじゃないですか。キックにしても、ムエタイってどうしようもなく国際的に強いものがあるじゃないですか。ところが日本国内の各団体はバラバラになってるんで、最近はトップの選手が集まってやってるんだよね。場所は飯村さんのところだったりするんだけど、トップ同士が垣根を払ってやんないと、タイ人には勝てない。だから団体からいったら信じられない組み合わせで、新日本キックのチャンピオンと大月晴明選手とかが稽古してる。大月選手は完全にガチの人だから全部潰しに来るらしいんで、飯村さんもガチで肋骨を折りに行ったらしいけど、結構すごい稽古をしてるらしい。あと柔術もやっぱりブラジルには絶対的に強い奴がいるから、早川光由さんのところでトップチームみたいなの作ってるらしいし、最近は裸の方も青木真也さんを中心にトップチーム作って実際に結果を出してる。それでいくとうちなんかではどんなことを考えればいいですかね。

清水:やっぱり今は技を繋ぎ合わせてって感じになってるんですけど、自分なんかは別に柔術はできないし、柔道も大して出来る訳じゃないし、だけど多分空道のルールでやったら取られないと思うし、逆に取れることもあると思うんですよ。だからほんとはもっと研究する余地があるんですけど、試合のことをあまり考えてないですよね、みんな多分。 練習とかはすごくやってると思いますよ。キックもやってるだろうし、組み技も練習してるだろうし、だけどあのルールってのは特殊だと思うんですよ。それだけじゃないっていうか。

ーー:僕が思うに、ニーインザベリーなんかも遥かに有効だと思うんだよね。簡単に効果取れちゃうから。それで僕のクラスではやってるんだけど。マウントになってから取ったら大変じゃない。

清水:そうですね。だから、組みに関しての全てのレベルが低いんですよ。だって簡単ですもん。とったりするの。

ーー:あのルールの中で寝技でもっと取れると思うんだよね。例えばニーインザベリーから締めなんて誰も使わないでしょ。

清水:そうですね。知らないですからね

ーー:でしょ?ベースボールチョークとか使えるよ。ニーインザベリーの段階で効果とって、締めればいいんだから。いまならまず大半が引っかかりますよ。本だって出てるんだからもっと研究の余地があると思う。

清水:他の北斗旗に出てる選手がどんな感じかは知らないですけど、本部に関してだけ言うと、ほんっっとにやらないですよね。試合に勝つにはどうしたらとか、自分が強くなるにはどうするかってことを考えてる奴なんかいないですね。びっくりするのがサプリメント。スタートラインとしては絶対に当たり前だと思うんですよ。サプリメント飲んでウェイトやるくらいは。まあ基礎体力でいいですよ。もうそこからまず導いてやんなきゃいけないっていう・・・

タンパク質1日何グラム必要とか。そんな計算式って、うちらの頃って誰でも知ってることだったんですよ。例えばタンパク質は1日に何グラムしか取れなくて、1日に体重何キロあたり何グラム必要って。そういうを今はいちいち教えてやって、しかもそれは、本見れば簡単にわかることなんですよ。 なんていうかもう学習する気がないっていうか、強くなりたいっていう気持ちがその程度なんですよね。大道塾にいる選手だけがそうなのかもしれないですけど、当然レベルも落ちますよね。選手がそんな意識でやってれば。


指導法:昔と今

ーー:今、空道は総合武道、総合格闘技になっていますが、環境が整うなら清水君が考えるベストの稽古ってどんな感じのものになりますか。

清水:ガードをもっとやるべきじゃないですか。柔術ですか?あ、当然やってもいいと思います。でも自分は柔術をほとんど知らないんですよ。だけどあのルールで大事なことっていうのは倒れた時にどこに立つかだと思うんですよ。倒れないことと。だとすると、柔術が必ずしもベストじゃないんです。自分にとっては。

ーー:でも昇段審査があるからねえ。あれはどう思う?

清水:あれも、自分は変えた方がいいと思います・・

ーー:上が足をつかんでるなら柔術的に言って9割以上は上が勝つに決まってるし、下ががっちり道衣をつかんでるなら30秒は簡単にがんばれるからね。

清水:ええ。せっかく昇段審査でそれまでがんばってたのに、柔術やってる奴をいきなり当てられたらどうしようもないじゃないですか。よくわかってないから。だからあんな態勢からじゃダメですよ。空道の寝技の判定材料にならないですよ。下から始めたって何にも出来ない。試合で取ったりできるのは、打撃後どこに立つかだと思います。

ーー:最初から横につくようなポジションから始めたらどうだろ?

清水:自分の持論ですけど、レスリングとかはいいと思いますね。倒れない力がつくから。

ーー:倒れなきゃ上になるんだからね。

清水:みんな1回やった方がいいと思います。 レスラーたちがもし打撃が出来たらどうなんのかなって思いますよね。倒せないですよね、絶対。だからレスリング出身で打撃やってる人って強いじゃないですか。

ーー:一番単純に、はやく強くなると。

清水:昔は相撲とかやってたじゃないですか。今はあまりやらないですけど。相撲とかレスリングの基本的な原理とかもっと…。ウェイトとか全然役に立たないです。

ーー:僕はだから柔道始めた時に、ウェイトは止めちゃいました。すごく好きだったのになあ。だって柔道やってる親父でさ、腹出てて胸が垂れてる人でさ、信じられない力を持ってる人がいるんだよ。振り回したりとか、インナーマッスルの強さってあるじゃないですか。あと倒れない強さ。

清水:組み技系はウェイトやってない人すごい多いですね。多分、半数くらいですか。高重量ウエイトは怪我もしやすくなるじゃないですか。うちらもほんとは考えなきゃいけないですよね。

ーー:万遍なくたくさんの筋肉を鍛えなきゃいけないってあるじゃない?もっと全体のバランスをよくするとか。ウェイトを好きな人はやればいいと思うけど。ウェイトで大きな筋肉付けたあと細かい筋肉たくさん付けなきゃいけないですよ、やっぱり。

清水:時間ないですよね。ビジネスマンの人たちは。でも補強とかは… 一般では結構多いんですよ。補強を全くやんないやつ。でも試合出るんだったら腕立てくらいはやってほしいですね。めんどくさかったら腹筋だけでもいいから。

喧嘩の仕方を覚えただけの素人が殴り合って、みたいな時があるんで。今にすごくでかい事故が起こったりするんじゃないかなと思います。

ーー:事故に関しては…、基本も移動も攻撃だし、極真で何年もやるから四級で顔をさらして打ち合いになっちゃうんだよな。防御は指導者に任されてるんだけど、基本と移動しか教えない人もいて、それで審査を受けさせるからね。それに昇段審査で強いのと弱いのとが当たるでしょ?怪我されたら解散だって、道場は。

清水:連続組み手も成立しないですからね。自分は連続組み手の1人目を昇段を目指してる者同士にやらせるっていうのはちょっとまずいと思います。だって、どっちか負けちゃう訳じゃないですか。確実に。あれはちょっと・・・まあ人数少ないからしょうがないんですが。

ーー:当日は黒帯がたくさん見に来てるんで、相手してもらったらどうなんだろ?何人抜いたとかじゃなくて、レベルを見るという審査にして。

清水:何点取るかでやると、すごく簡単に取れるやつと、メンバーがめちゃくちゃでこんなんとれっこないよっていう場合もあるじゃないですか。逆に、「こんなんでいいの?もう1回やった方がいいんじゃないの」とか。今は同級でもレベルが極端で一定じゃないんですよね

ーー:渡辺慎二支部長は面白い人で、支部で緑帯までは毎回結果を出してるし、世界チャンピオンだって出してる。どうやら支部内で教則ビデオ作ったりして自分の教え方を伝えてるみたいなんだよね。

清水:それは見てみたいなと思いますね。

ーー:総合なんだから、一回ですべては教えられないんで。

清水;あれはたまたま素質のあるやつが集まったっていう状況じゃないですよね。あの結果の出方は。絶対何かあるはずなんですよ。

ーー:教え方がうまいんだろうね。ずっと好奇心を持続されてるし。首相撲とかも、まだほとんど技術が共有されてないでしょ。いまだにどうやって曲げるとかそんなレベルだし。

清水:首相撲はでも自分の時は散々やってましたね。当たり前のセットでした。

ーー:分かっている人は、廻して崩すとか、膝を入れて蹴られるのを防ぐとか肩をすくめてロックをはずすとかやってるけど。

清水:時間が足りなくて無理ですよね。一番コンスタントに来てる選手で…週に3か4かってところですから。でもそいつもどんくらいかっていったら定時やるだけなんですよね。基本やって2時間やるだけじゃ試合に出るとなったら足りないんですよ。時間がないっていうんですけど、時間ないって…確かに忙しい人もいると思うんですよ。でも森先輩とかって9時とか10時に来てやってましたからね。30分、1時間でも。

ーー:1日に1回やると全然違うよね。

清水:そうですね。そこまでの覚悟がなくて、簡単に時間がないとかって言うのは良くないと思いますね。ない訳はないと思うんですよ。それで「北斗旗は出たい」なんて成立しないです。

ーー:飯村さんの支部は、今は11時近くまで開けてるでしょ。自分がいなかったら鍵を渡してるし。選手が社会人だからこそ、いつ来ても構わないってシステムにしてあるんで、もう最短時間でミットで息上げちゃうからね。飯村さんミットを全員に対して持つじゃない。社会人でも選手なら週6、5来れるように。寝技やんないのもある意味徹底してる。要するに組まなきゃいいって発想だから。

清水:自分もそれでいいと思いますよ。色々なスタイルがぶつかった方が盛り上がるし・・・ただ凄い強い選手が、組みで簡単に終わっちゃったりするんでもったいない気もします。

ーー:ミドル蹴ってつかまれても投げられないし、絶対倒されないっていう、そのための練習をやってる。総合も最近はそうなってるじゃない。絶対倒されないようにミドル蹴るわけだから。あれも研究次第だと思うんだよね。それが本部にいまいち伝わっていないな。

清水:そりゃそうですよね。本部の指導員が一人も残っていないですから。

ーー:だから僕は、1人は常駐していないと無理だと思う。ずっとそう希望を出してるんだけど、ダメだった。まあ、事情はあるでしょうけど。で、基本やって移動やってみんなさっさと帰るシステムになっちゃった。もう取り返しがつかないのかな・・。


選手生活を振り返って

ーー:それでは話を戻して。
支部はどう移動していったんですか?本部は何年までいたんだったっけ?

清水:本部は99年春までですね。その後、地元に帰りました。

ーー:その時はどの支部に属してたの?

清水:この前の大会の結果で、ほんとのプロみたいな人間が…と言われましたけど、自分は初めて優勝した頃から世界大会の予選の体力別までの間って、普通に働いてたんですよ。職員だからってよく言われるんですけど、自分は普通に働いて稽古や試合もしてたんです。

ーー:なるほど、その間は職員じゃなかったんだ。

清水:2000年5月あたりもそうだし、山崎先輩とやった時もそうだし、長田先輩との時もそう。

ーー:職員というプロじゃなかった、と。

清水;普通に働いて、休みをとって会場へ来てました。この前の結果で「職員ばっかだ」って言われたけど、それはちょっと違います。

ーー:なるほど。しかし、「あの人はプロだから」とかいうのは、典型的な負けた者の言い訳だな。日本で仕事を持ってない選手なんて、大相撲だけですよ。あとは一部の世界チャンピオンだけで。でも職員が良いか悪いか別にして、ある程度時間をかけないとどうしようもないところがあるでしょう?空道は総合競技だから、立ち技も組み技も寝技もいっぱいやることがあるからね。

清水:自分は時間の余裕がある仕事を探しました。賃金の高い安いじゃなくて、練習できるかどうかを重視して。

ーー:キックとかだったら3時間くらいでトッププロでも稽古を終えてるわけだけど、それからまだ寝技とかあるから時間がないとどうしようもないよね。

清水:今選手の人たちは、週1とかでは難しいですよね。どっちかやって来てればいいんですよ。打撃か寝技か。だけど全く何も経験ありませんって人は、ほんとに大変ですね。教える時もどうしたらいいのかってお手上げです。

ーー:空道は高校生までは少年部扱いで顔を殴るのは大学生以降って規定になってますから、それを前提にして選手を強化するんだったら、中学高校で柔道の二段、柔術だったら青帯までは取らせなきゃいけないんだと思うな。藤松だってサンボを全日本クラスでやってた訳だから。その上に極真ルールを何年もやったら、何をしてるのか分からないうちに社会人になって、稽古時間がなくなっちゃいうでしょ。極真ルールって、やりすぎると顔面ルールではかえって悪くなるところもあるしね。

清水:4年も5年もやることになっちゃうんですよね。 4級になるって、ちゃんと稽古に来てて審査を毎回受けてる奴でも多分2年かかるんですけど、無理がありますね。

ーー:だってそもそも人って集中してやってるモノには3年で飽きるしでしょ?3年後に栄光があったらそれからまた3年続くかもしれないけど・・・今度柔術で黒帯を取ったパラエストラの半谷選手なんて入門して三年らしいですよ。それで全日本代表クラスまでなった。中井さんのところは、集中してやったら最短距離で強くなれるシステムを作ってます。

清水:たいていの人は無理ですよ。続かない。フルコンをやってて、顔面やりたくなって大道塾に来たのに、またフルコンを2年とかやるわけですから。自分だったら多分辞めてます。

ーー:それで、タイトルを取ったのは、最初はいつだったんだっけ。

清水:2002年です。

ーー:長田さんと対戦した感想はいかがでした?

清水:2003年ですか?でも前の年に先輩が復活された時も、戦うとは思ってなかったんですよ。階級も違ったし、何となく実感がわかなったんです。長田先輩って、マスコミでの扱われ方は、今で言う魔裟斗だったわけじゃないですか。あれ以上だったかもしれないですよね。

ーー:人に与えたものの大きさは、もっと大きかったかもしれないですね。他流派もみんな長田っていえば知ってるわけだから。正道会館の金泰泳選手が長田さんと引き分けたポータイ・チョーワイクンに勝ったときに感動して泣いてましたもんね。長田さんの影はそれくらい濃かった。

清水;あの当時のことを聞くと、みんな「すごかった」っていいますね。ビデオとか買って見た人と試合をするなんて、すごく不思議な感じがしました。あの2003年はほんとに運命の年だな…と。長田先輩がある程度まで万全の状態で出てきて、自分は負けたけど藤松は勝って、みたいな。一応今の世代で止められた、何ていうかすごかったなと思いました。

ーー:そうでしたね。前の世代を止めて、現役の強さを見せることができましたからね。それじゃあ今は稽古はどんな風にやってきてるんですか?

清水:稽古は今はやってません。教えてるだけです。

ーー:へえ。大会の前は?

清水:大会前は…前と言っても出るのが1ヶ月前に決まったので、そこからですね。 今回はこれといって特別なことはしなかったです。技の確認くらいですよ。走ったりはしましたけど。

ーー:どのくらいの距離?

清水:たいした距離じゃないです。それより坂とかダッシュしたりとか。

ーー:あまりだらだら走ってもしょうがないからね。あと道場稽古はどんなことをやってたんですらか?

清水:特別なことはやってないですね。ミットとか…。ただミットなんか今は別に持ってくれる人がいないんで。あとはサンドバックとか・・

ーー:稽古はスパー中心だったわけですか。

清水:スパーリングはそんなにやってないです。動きの確認です。

ーー:藤松選手とはやらなかったの?

清水:あまりやらなかったですね。やったら不利になるだけなんで。不利っていうか、不利にも有利にもならないけど、こっちがあいつの動きに慣れるというのは全くないんで。やる意味ないんですよ。マスとかやる必要もないんですよ。あいつとスポーツでやっても何の意味もない。逆に闘って勝とうと思うならやんない方がいいです。ただ全くやらないのは問題外ですよ。

ーー:それでは今までやってきたことについて伺いたいんですけど、いろいろ出稽古してるでしょ。それについて伺えますか。他流ではどんな稽古をやったの?例えばキックをやってた時期があったよね。

清水:キックは、住んでたところに支部がなかったから仕方なくです。ただでもそこで会った人とは、そこにいなかったら会わなかったです。そこから繋がってって知り合った人たちがいて、その人たちがやっぱこの前も来てくれたりしてるんですよ。

ーー:そのキックのジムは、細かい技術はともかくとして、教え方とかシステムとか見てて何か空道に生かせるようなところはありましたか。

清水:地方のジムって、自分が行くと、笑っちゃうようなレベルなんですよ、大体は。だけどそこはびっくりしましたね。教えてる人が無名なんですけど、すんごい強かったですよ。で、あーこんな田舎にもこんな人がいるんだって。礼儀もしっかりしてたし、ジムでなく道場って言ってるのも良かったし、ここいいなと思って入ったんですけど。

ーー:先生が強かった?

清水:強かったですね。もう辞めてますけど。 自分は関東の今ブームになってるようなとこは行ったことないんで。でも違うことやるのはいいと思いますけどね。やっぱ週6とか同じとこで同じことしてると、すごいマンネリになるんで、自分はだめなんですよ、たまに切り替えないと。ほんとに大道塾でやるだけだとだめなんですよね。


未来へ向けて・・

ーー:じゃあ、ご自分の今後の希望としては、どんなことを最後にされたいですか。大道塾の中で。

清水:とりあえず春というか5月で職員を辞めるので、その後のことも考えなきゃいけないんです。

ーー:今は職探し中?

清水:そんなんじゃないんですけど・・・

ーー:試合そのものはどうですか。春は出ない?

清水;春は出ないです。もう自分の中で…体力別に出てる人たちには申し訳ないですけど・・興味ないですよ。80キロ以上ある人間にとっては、階級別の最強はあまり意味がないです。
でも今度の北斗旗出る選手は頑張ってほしいです。一度優勝する事での意識の変化は、稽古100回分以上の物がありますし、他流派も体力別の方が出てきますからね。

ーー:無差別と同じ相手で、しかも層が薄いからね。

清水:あと2面でやって、何か散漫じゃないですか。無差別をやっちゃうと何かもういいかな…って。

ーー:次となると、今年の無差別?

清水:いや、正直もう体がおかしいんで・・

ーー:それは藤松君とやって?

清水:いや、あれじゃないです。あれはたまたまそうだっただけで、ウェイトやめたのってこれもあったんです。できなくて。医者に行かないとどうなるかわからないですけど、おそらくリハビリとか何とかやんなきゃなんないんで。まあ普通に日常生活に支障はないですけど、やっぱりミットとかはほんとにダメ。ちょっとやっただけで。だから追い込むにも追い込みようがなかったんです。走るしかなかったんで。そうなんで、とりあえずどうしようもないですよね。リハビリやっちゃわないと。あとはやっぱり教えるとかそういう方ですよね。

ーー:支部を作る計画は?

清水:それはありますね。ただ地元にするのか関東にいるのかっていうと・・まだ関東だって支部がないところは沢山あるじゃないですか。地元の方もほとんどないですね。

ーー:今のところ希望はそんな感じ?昔を知ってて今を知ってる私たちからいくと、仮に清水選手が出ないとしてね、藤松君が1人いるわけですが、彼中心のこの体制自体は、現実的にどうなっていくと思いますか、次の世界大会に向けては。

清水:正直、世界大会ってどうなるのかなって・・代表4人って誰が出るのかなって、だっていますかね?270以下、270以上ですよね?

ーー:藤松はどんどん体重を軽くしてるしね。

清水:藤松はまあ一番重いクラスに出るでしょうけど。あ藤松も次はやるんでしょうけど、その次はわかんないし。あと単純に80キロくらいの人間をあと4人。僕らが結構抜けちゃいますからね。「秋田のスター」小松洋之先輩はレシェトニコフにビビった自分に納得出来ないって、出たいみたいですけど。

ーー:いやもう、どうやって強くするのかな?寮生がいなくなっちゃったらね。そうなると、大学生くらいしかないと思うんですよ。暇な時間があって毎日できるのは。柔道だったら学生と卒業後数年が全日本選手ですからね。今回の成果は早稲田なんで、あそこにてこ入れしたり他大学にも真似させたりしない限り、きついんじゃないかなって気がするんですけど。

清水:最初に試合を絶対やりたいとかって思わせないと・・。昔はそうだったじゃないですか。だから自分も最初はそういうミーハーな感じとかがあったんですけど、若い時ってそれでいいと思うんですよね。二十歳くらいのときに社会体育とかそういう難しいことを最初から言ってるやつなんていないと思うんですよ。
よこしまって言ったら変ですけど、多少その物欲っていうか普通に俗っぽい目標があって最初入ったっていいじゃないですか。それが出だしなんで。それがないとまずダメでしょう。

ーー:その段階が今は希薄だ、と。

清水:例えば、今、お金もすごくかかるじゃないですか。道着にしろビジネスマンだとサポーターとか、審査とかはせめて今までのでもいいとかにしないと。公式のじゃないと審査も受けれないっていうのは、つまり最初に4万とかかかるってことですよね。審査まで受けることを考えると。プラス拳サポとか、スーパーセーフとか、厳しいですよね。ちょっと始めようかっていう額じゃないですよね。
2009年ですよね・・・・・。今から急に人がばーっと入ってくるってことはないと思うんですよ。だからほんと第3回を考えるとやっていけるのかなって気はします。

ーー:第4回はロシアでやるの?

清水:そんなことになったら誰も勝てないですよね。

ーー:こういう暗い終わり方もたまにはいいかもしれないですね。昔のことも今のことも知ってる長老選手から苦言を頂戴したということで。
長々とありがとうございました。













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第七回:平安孝行「地方からの挑戦」(後編)
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